チェンバーアナホールトリニティ「CAT」発売記念
伴瀬朝彦インタビュー
遠藤里美さん、河合一尊さんと活動を重ねてきたチェンバーアナホールトリニティでアルバム「CAT」を発表、とんちのキーマンとして活躍する伴瀬朝彦さんにお話をうかがいました。インタビューが長くなり三回にわたる運びとなりましたが、全回が繋がるような流れになっていると思いますので是非通して読んでいただきたいです。ばんせ氏、こちらの記事では二回目のインタビューになりますが、今回はちゃんとした音楽の話です。おそらく!(9月末都内某所にて)
「CAT」のこと、チェンバーのこと
ーよろしくお願いいたします。まずこの「CAT」、ジャケットから大好評ですね。
「泥笛」に続き、島田陽介さんにやってもらいました。大学時代の同級生で某広告会社に勤務してまして。もともとてっちゃん(倉林哲也)の「茶虎食堂」の装丁を島ちゃんがしてて(イラストは黒岡まさひろ)。島ちゃんの作品はセンスがあって上品で、それでいてパワーのある作品を作る人だなと思ってたので、頼みました。「CAT」に関しては最初にぼんやりしたイメージを伝えるだけで、あとはそれを汲み取って仕上げてもらってて、ほぼ島ちゃんの作品といえます。
ー最初にどんなイメージを伝えたんですか?
チェンバーアナホールトリニティ略してCATってことで、猫のロゴを作ってもらいたいというのと、泥笛の時は比較的人間臭いイメージだったんだけど今回は室内楽ってこともあって、なんとなく風景を思い浮かべるようなイメージ。あと色でいうと淡い感じ、というのだけ。島ちゃんは数パターン用意してくれて、選ぶのも楽しかった。ほんとに親身にやってくれるから信頼もできる。
ーCATのためにフォントを作ってくれたとか。
曲のタイトルのフォントは島ちゃんが使っている英字のタイプライターの文字を自分で、どうやったかわかんないけど、組み替えて、ひらがなと漢字を作り上げると言う手法で。どうやって作ったか作業内容は全然わからないんですが、えらく時間がかかるというのだけはわかって。自分がこうしたらいいと思ったらやるっていうのがすごいなって思う。ありがたいです。
ーアナホールクラブバンド名義で「泥笛」を出したのが今年の4月で、「CAT」はそこから約五ヶ月でのリリースになりますが、経緯なんかをきかせていただけたら。
泥笛を作っている段階からアナホールとチェンバーは平行してやってたんだけど、むしろ三人(チェンバー)の音源を作りたいというのがあって。チェンバー始めた当初からこっちのほうがカタチにしたい欲はあったけど、でも泥笛つくるのが先だろうと。
それに最近(アナホールではなく)伴瀬朝彦名義で活動してるというのもあって、チェンバーで音源出しておくチャンスがあるうちにと思って。
ーチェンバーでやってきて一年ちょっとくらいですか、ライブを重ねてきて、音源を作るにはよいタイミングだったんじゃないでしょうか。
結果的にはね。六月くらいから録音始めたけど、年明けの時点でもう作ろうとは言ってたんだよね。えんちゃん(遠藤里美)もこの三人で創作がしたがっていて。たぶんね。
ーたぶん(笑)。そうでしょう。
ミックスをやってみたいとも言ってたし。
ーそう、えんちゃんがミックスしたんですよね。えんちゃんはそうゆうの個人でずっとやってたのかな?
それは本人にきいてみないとわかんない。どうなんだろうな。
というわけで、遠藤里美さんご本人にうかがいました!
ー今回すべて一人でミックスをしたということですが、今までにやっていたことはありましたか?
【遠藤】それが、、、ほぼ無いですね。日常的に曲作りや録音をしているということもないですし。
でも前から興味はあって、失礼な話、チェンバーでミックスをやってみるのが最初のとっかかりとしてはちょうどいいかなと思ったのもありました。曲もわかっているし、編成もシンプルだし。
結果的には本当にいい経験になりました。
ーCATでミックスをやってみてどうでしたか?
まず、ライブをしててもよく言われるんですが、3人のバランスが絶妙というか。自分で言っちゃいますけど。
出るところ、抜けるところなど、3人の意思の疎通が普段からできてたので、とにかく自分の中で迷いがないミックスでした。
音作りも迷わなかったです。二人からもあまりクレームも来なかったし。
ただ、時間はいくらあっても足りないですな。
ーききどころなどを教えてください。
やっぱり、伴瀬氏の歌と歌詞ですね。
伴瀬さんの声のセクシーな部分を引き出したつもりです。
あと、ライブだとどうしても完全に歌詞を聞き取ることって難しいですから。
イッソンさんのギターは全部ですね。意外と暴力的なことをやってますよー。
それと、イッソンギターで言うと録音ならではのパンふりですね。ホワワワーンと左右に移動したり、気持ちのよい音になっていると思います。
全体的に優しい音になってますので、真剣に聞くもよし、お昼寝しながら聞いてもよし、と思ってます。
(いいお話がきけた、、、!伴瀬氏に戻ります)
ーミックスは全部えんちゃんひとりでやったんですよね。たいしたもんだ、、、。
たいしたもんだ。録り方自体はそんなに考えてなくて、チェンバーだし家でとるのが自然かと思って、全部えんちゃんちのトイレでとった。
しょんべんしたくなったら一回マイクを外に出さなきゃいけない。
エレキとサックスはスタジオでとったりいっそん(河合一尊)が自宅でとったり。
ー「又八」さんも参加してますね。コーラスはどこに、、、
ハングリーハングリーとか。ききとれないと思うよいっそんの声がでかいから。あと口笛。又八は不安がってたけど。こんな不安定な口笛が全編に入っていいのか?って。
ーそれがよかったんですよね?
そう。これがいいって言ってむりやり。二重に重ねて。
ーてかこれクレジット「又八」でよかったんですか
そこで又八ってつけたんだよね。Alfred Beach Sandalをここで出す必要もないだろうと
ーそんなルーツがあったんだ又八って、、、!
適当に又八にすっかって。あのアルバムはジャックおじさんとか架空のいきものがいたりするからビーサンより又八のほうが新鮮かなって。
ーなるほど。ファンタジーがつながっていくみたいな
そう。あとづけね。
ーじゃあこのアルバムの録音は4人で、、、4人っていっていいのかな(笑)
又八はよく”いた”から。見守りだね。
ーよく仕上がって、、間に合ったなあと。(九月のツアーに間に合うように完成させた)
えんちゃんがいろいろあって一番忙しい時に、がんばってくれたから。パソコン実家に持ち帰って作業してくれたのが大きかったな。
ー音きれいですよね。チェンバー(室内楽)っぽい、近くて良い音がする。
録り音がしっかりしてたから。あとはダブジャズのターくんに外向けに(マスタリング)してもらった。
ーえんちゃんといっそんさんのことをききたいです。
三人でやるときはほんとに「決めなくていい」っていう自由度があって。アナホールの時は、、、(カッチリ決めなきゃいけない、)メンバー多くなれば決めごとって多くなるの当たり前なんだけど、この三人だとほぼ指定する箇所がない。ここ抜けて、くらいだね。たまにフレーズ指定したりはするけど、細かいことで言うことはない。ここだけっていうのを最初に言うけど、あとはきいてまかせる
ーそうだったんだ。すごいね。
いっそんなんかは時間が経つ程にかたまってって良いことになるプレイヤーだから。最初結構何もやらないことが多い、ギターが一音ぽわ〜んて鳴ってるだけとか(笑)けど回数重ねるとどんどん決まってくる。時間はちょっとかかるけど長い目でみるとほんとによくなる。
えんちゃんはその場ですぐできちゃう子だから。曲をきいてちゃんと入り込む人だし。一尊もえんちゃんもどっちも前に出ないプレイヤーだけど、三人だと間が結構あくから出ざるをえない。えんちゃんはもともとがセンスいいから。邪魔だってときは、もー、ナイね。
ーすごいなあ。足りないと言うこともない?
足りないことはあるよ。ここはガーっときてもらってガーっと、みたいなこというんだけど(笑)「ここはイラナイんじゃない?」とか言ってきたりするね。
三人でやってるときは俺も二人のききたいから自分はあんまり弾かないようになる。
まあ、うたってるとあんまり弾けないんだけど。もともとが。
ーそうなんだ?
うたいながらだと思いついたフレーズとか全然弾けない。すごい練習をすればできるんだろうけどそんな練習とかしたくないから、自分のギターフレーズの。
ー(笑)
うたをちゃんと聴こえるようにしたいから。
俺がサポートでやってるようなギターを自分メインの音楽でやったらぶつかるのよ多分。サポートしててもそう思われてるかもしんないけど、、、それだったら、、駄目だね(笑)。気をつけてるけど攻撃性が強い部分があるから。「あー、、、」って思う箇所があるだろうね王舟にしてもビーサンにしても。
ー(笑)それが気にいってばんせを入れてるんじゃないの!?彼ら。
いやでも度合いがあるじゃない。そこらへんのしのぎあいですよ。やってみる、みたいな。
ーでも出していっちゃうんだ。
出さないとわかんないからね、どこが嫌なのか。そこは絶対出すべきだと思って敢えてやってる。言われたら下げるというやり方をしてる。そうじゃないとね、面白くないから。
サポートのこと、自分の音楽のこと
ーもともと伴瀬さんはアナホールあり、ホライズン山下宅配便、片想いなど複数の所属で活躍されてるわけですが、、、最近はAlfred Beach Sandalさん、王舟さん、mmmさん、松倉如子さんなどのサポートで活動の幅がさらに広がりましたね。
広がりましたね。さっきのにつながるけど、その人たちとやることで自分のやりたいプレイをできてるので、そのぶん自分メインの時に弾かなくて済むという利点が。
ー発散ができてるんだ(笑)
発散できてる。何もやってない状態だと俺こんなギターじゃないのにと思っちゃうかもしれないから。
ーほかのとこでいろいろ表現できてるから自分の時に焦らず済むというわけですね。そうするとソロとかチェンバーでやってる一番音楽的にやりたいところと、ギタープレイは別だと。
そうだね。で、自分がメインでやってることが一番音楽的にやりたいことかっつったらそうでもない。いろんな要素が分散してるかんじよ。全部まとめるとどうしようもない。分散してるのがいいんじゃないかと。
ーじゃあ自分メインの音楽っていうのは、、、どうゆう位置なんでしょうね?
こうゆう音楽がやりたい、っていう「点」があるんじゃなくて、要素だね。「要素」が好きなの。こうゆうもの、というよりは。出来上がったものよりも。
要素をつきつめてるだけで満足感ある。たとえばこのフレーズだけが弾きたい、とか。
ー それじゃ一曲とかにするのって、、、
一曲っていうのはまだそんなにでかくないの。それくらいはまだイメージできる。「こうゆう音楽がやりたい」っていうようなものになると興味ない。
ー初めてそんな話しきいたなあ。
その結果が今のスタイルになってるわけだよね。
ーふーむ。でもたとえばチェンバーの八曲だけ聴いたひとは、こうゆうのが伴瀬さんの曲だーってなるじゃない?
それは意図的にやってるわけだね。
ーそうなんだ!
チェンバーっぽいかを自分の中で判断してるフシはあるよね。そこでホライズンみたいな曲は書かないし。
ーホライズンは別格でホライズンぽい曲を書くというイメージなのかなと思ってたけど。自分の曲も自分の曲っぽくというアタマで?
それはあるね。アナホールっぽい曲を書く。
ーへえー。アナホールっぽいってなんなんでしょうねそれで結局、、、
それは、説明できないけど、外れたらわかる。
ーへえー。いつからあるんですかそうゆう感覚。
アナホールをね、始めたくらいから、あるよ。その幅とかは移動してるだろうけど。もともとそうゆうことでホライズンとアナホールに別れたからね。(ホライズン/アナホールの経緯、詳しくは次回に)
ーホライズンと別れたらこういう音楽にくるんか、、、という、、、
別れた事実はでかいからね、ホライズンと違うものをゼッタイやんなきゃいけない。
ーは〜、、、「課してる」音楽なんですね、、、
そうゆうのが好きだからね。
ーそうゆうのきくと変質的な感じがするなあ。
そうかな。まあなんとなくだからね。無意識にそうなってるだけで日頃から意識してるようなことではない。今は馴れたから無意識にやってる。
ー馴れたから、、、。
言葉とかでもこっから先は違うだろってのもあるから。
ばんせのコトバ
ー言葉の話もしたいですねちょっと。歌詞のことですが。「ワンフレーム」を聴いたときモチーフがキャッチーというか、アナホールの曲のなかでは新鮮に感じたんですけど、こうやって歌詞カードをみるとカタカナ遣いとかでやっぱりばんせ節が出てるんですね。
カタカナにすることによって抽象化をするっていうのはずっとやってる。限定させないような。
そうゆうのは常にやってますね。
ー歌詞を改めてみると、読まないと、聴いただけではわからないカラクリみたいなのありますね。
駄洒落好きだから。意味があることをあえて擬音化したりね。もともとの意味があるから自然と伝わってきそうだし。
ーそこまで意味とか理由とかない言葉を美しくコーラスしたりしますよね。
コーラスは熱い言葉を三部とかでやるとうるさいのよ。
意味のない言葉をさらっとやるのがよい。
ー「ジャックおじさん」とか「彼の事情」の彼とかはモデルがいそうだけど。
モデルはいない。なるたけ現実の人は登場させたくない。造り上げる。
誰かをモチーフにはしたくない。
ー 「彼」から「あんた」になるとか、一曲のなかで視点の移り変わりとかもありますね。
誰が言ってんのかってはなしだからね。俺が言ってるんじゃないふうにしたい。
最近はそうゆう傾向にある。自分じゃない誰かが言った方がうたいやすい。
ーふむふむ。「ネジダンス」の歌詞いいですよね。個人的に気に入ってます。
これも言うと、国語の教科書でボンボン時計の中から赤と青のこびとが出てきて夜中誰もいない間に遊ぶってはなしがあったけど、たぶんそれがモチーフ。
ーへー。『まわるテーブル』ってのはレコード?
かなーってくらい。
こうゆう(その場にあった)テーブルだっていいんだから。
ー言い方変えて表現してるってんでもなくて、特に明確ではないかんじ?作りたいのは物語みたいなものなのかな?
そうかもね。言い回しとかも常日頃から意識して使ってる。
ー日本語の歌詞を凝って考えるのはきらいじゃない?
好き。英語のうたとかうたいたいんだけど、表現力が乏しくなるかも。
あんまりぐっとこないかもしれない。
ー言葉を伝ようって感覚はあるんですね。
うたってる最中に自分で歌詞の意味がわかるって時があって。そうゆう時はいいライブだったりするな。
ばんせの職人的な部分が垣間見えてきましたところで、次はばんせヒストリーなど。
次回「焼酎もう一杯」、お待ちください!
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