お疲れさまです!最終回です!
前回のルーツ話のつづきから、現在伴瀬をとりまく人々のことなども。
最後に河合一尊のインタビュー、映像、ライナーノーツと、もりだくさんになりました。これでもかと。
ーじゃあ大学時代はロックで。
大学時代は音楽より音楽をやってる人に興味がいった。それまでは音楽だけを聴いてたけど、こいつはどういうつもりでやってんだ、という思考になった。
だからブルースもそのころじゃなきゃ入ってこなかったのかも。
ーでは、キーになってる音楽家というのは?
まあトム・ウェイツと。ビートルズは4人個々に影響受けてるよね。
ストーンズのキース・リチャーズでしょ。
セロニアス・モンクは多大に影響受けてるよね。
あとクイーン、、、あと誰がいるだろ。ギタリストはキースじゃない気がしてきた。
ー誰だろ。
楽器で言えばいいか。ピアノだったらモンクが師匠。歌だったらトムウェイツが師匠みたいなもんで。
ベースは漠然としてる。黒人ソウルのベースみたいのがやりたい。俺のベースはギターの延長みたいなもんだからあれだけど、好きなのはそうゆうベース。河合一尊にも多大に影響を受けてる。
あとはエレキギターか。エレキはいっぱいいるな、、、。
(延々と続くことになるため割愛いたします。またいだわりに、すみません。)
ちかくのことをいくつか
ーAlfred Beach Sandalの話とかききたいな。
ビーサン初めてみた時は円盤でアナホールと対バンだったんだけど、すごいのがいんなと思って。
その時はまさか一緒にやると思ってなくて。自己完結型の音楽かなと思ってたからなんだけど、そうじゃなかった。ビーサン自身いろいろやりたいと思ってる人だったし、作用を楽しむ人だったから。
逸話としては、最初にアナホールとやった時(アナホールの5人がそれぞれ一曲づつビーサンに入るという企画)俺だけダメ出しがきた。『中国のシャンプー』にピアノで、個人的には面白い入れ方をしてたんだけど、「そんな現代音楽みたいなのヤダ」って。こいつ言うなあ、と思って。
それでこう何回かやってくうちに良くなって行って。
で、本番はまた新たな方向性で攻撃したら、またダメだって。
ーなんでそういくかな(笑)
そのほうが面白いと思って。
とっかかりがそれだったってのがよかったね。あとは良くなるしかない。
さっきの話だね、最初に出してみて、何がいやなのかを知るっていう。
ビーサンは音楽の根本から常に考えてるみたいなとこあるから。何をしようがってかんじだねある意味。
ーまだまだ二人でやって面白いことできるなってかんじ?
全然できるね。
ー王舟は?
王舟は曲調的に入り易い曲なんだよね全部。どこまで弾かないかみたいなとこにかかってるね。しょうゆラーメンにどんたけしょうゆを入れないか、みたいな。
王舟もここはちょっとみたいなこと言ってくるのよ、すごいひかえめだけど。それは、けっこう、無視したりするんだけど(笑)ちょっといやそうだなーって思ったらそれは、ちょっとづつやめる。
ー(笑)なにその加減。
王舟はバックで底上げをするみたいな。もうやってる音楽はかたちになってるから、あとはどう盛り上げるかみたいなところ。色をつけてあげるかんじ。王舟はルーツがわかりやすい音楽で、やってるものがそれに直結してる。それが好きなカンジの音楽ではある。
歌詞が英詞っぽい(完全な英語詞ではないらしい)けど、最初ちゃんと歌えよっていうか、言葉のっけないのかよと思ったりしたんだけど、バンドサウンドを知ったら、あの声は器楽的要素として聴こえるのがむしろいいのではと思うようになってきて。楽器の一部としての声という聴き方をすればすんなり入って来るんじゃないかと。みんなそんな聴き方をすれば楽しいんじゃないかと思う。
ーすごい!その意見、いいはなし。
(笑)、そういうのもあってコーラスをきかせたい。楽曲のふくらみを出すためのコーラスを増やしたい。王舟バンドでもえちゃん(mmm)がコーラスしてるのはほんと重要。
ーそうだね、もえちゃんの場合は?
もえちゃんは円盤ジャンボリーで初めて観て、そのとき俺なんとなく録音してたのねICで。『外人さん』をやってたんだけど、さいしょの一声でやられた。けどICのメモリが一杯になってて、録音ははじめのフレーズ(外人さん冒頭の静かな部分)だけで終わってたんだけど、そのフレーズだけで充分すばらしくて、最初の一節が入っただけのその音源をずっと聴いてた。
ーそこだけを何回も聴いてたんだ。それはすごい、、。
そのあとにライブ観たときCD買った。今でこそサポートやってるけど、その時は憧れの存在だった。
サポートは俺からやらせてくださいって言って。曲も俺がやりたいのを、こんな感じににやりたいんだけど、って指定して。
ーそうなんだ、やりたいこと最初に言ったんだ。
それは全部オッケーで。練習入ってみたらかなりすんなりはまった。
もえちゃんは声をきいて一瞬で惹かれる魅力があるのもそうだし、曲自体が、作曲能力のセンスが素晴らしい。シンガーとしてだけじゃなくミュージシャンとして才能がある人。サポート能力もあって、楽器の入れ方もすごい。王舟はもえちゃんがバンドに入ってくれてることをもっとありがたいと思うべき。
ー(笑)。松倉(如子)さんとはどういう出逢い?
茶虎食堂で紹介されて、音楽やってるんですよって。最初はそーなんだーくらいに思ってたけど、一度ライブに行ったら、参りました、ってなった(笑)。
ーそれから対バンしたりは?
なかったね。道でたまたま会うとかくらいで、音楽ではとくに交流なかった。三月の穴心で一緒にやることになって初めて。
(2011年3月の伴瀬企画「穴心」、ここでチェンバーが松倉さんのバックを初めてつとめた。)
ーそうだったんだ。意外だな。
是非やりたいと申し出たら、嬉しいですと言ってくれて。
ー 一緒にやるときはどんな感じ?
丸投げですよ丸投げ。演奏まるなげ。
ーでもオッケーでるんだ?だめだしとかない?
なんにもない。
ーすごい信頼感ですね。
もうなんか、音楽じゃなくて人だけみてるみたいなかんじのとこあるね。
ーもっとも根本的な、、、。
そう、根本的なとこ、考えるね。
なんもだめだししないなー。そのぶん一番シビアになる。何も言わないのも怖い。
ー松倉さんのときも、チェンバーはそれぞればっとやるかんじ?
最初に俺がある程度言うけど。
こうゆう感じっていうのを(遠藤、一尊に)伝えて、松倉さんにはそのあと
伴「こうゆう感じになりました。どうですか」
松「いいよー」
伴「わかりました」って
ー(笑)すごい。松倉さんも楽しめてるんでしょうね、それがライブに出てる。
楽しんでるとは思うけどね。
松倉さんは今でこそピアノとか楽器も始めたけど、唄で全部を表現する人で、逆に言うと「唄でしか表現できないという美しさ」がある。第一声で人を動かす力があるし。だからこそ勝さんとか渋谷さんとか、すごい人たちが支えたくなるんだと思う。
シメに近況や心境など
ー九月は立て続けに遠征しましたけど、神戸名古屋ツアー、伴瀬(アナホール)での遠征は久しぶりだったんじゃないですか?
久しぶり過ぎて行ったことないかと思ったもん。ツアーって自分名義じゃ行けないもんと思ってたね、もう。五人の時代なんか(メンバーのスタンスなど状況的に)もう無理だよ、これじゃどこにもいけねえや(泣)と。
(アナホールを解体して)だいぶ解き放たれたよね。
すごい責任ばっか背負ってるみたいな感覚でやってたから、よくわかんなくなっちゃって。
ー最近のライブがいいのはそれが出てるよね。アナホールにとらわれず伴瀬朝彦名義でやりはじめてることで、よくなったんじゃないかと。
もっと自由にやらしてくださいよって、誰に思ってるのかわかんないけど、思ってたんだね。
ーでもそれを指摘されるのはヤだったんじゃないの?(笑)
言われんのはやだったね。それをなんとか上げようとしてんのにってのがあった。
言われたくなかったけど、結果そうだったんだね。
ーそれでもバンドをやめること、ずっと考えてはいた?
自分のやってるバンドだけど、自分の思い通りになってないなって。
もともとの関係性を考えられてなかったのかな。
アナホールクラブバンドを一回やめたことで、バンドってことを改めて考えるものはあった。バンドなんておいそれとやれたもんじゃないよ。
ーで、ツアーのはなしに戻って。
遠征はいいよね。再確認できるね。「遠征してまで!」やるわけだから。
中途半端になっちゃうと疑問がわいちゃう。遠征してまでやることかって思わなくてよかった。より色んな人をまきこむわけだから、まきこんでよかったんだと思えたのは収穫だと。
都内でやってるだけだったらなかなかそういう実感持てない時もあるからね。
ーアルフレッドと三輪二郎と一緒に行きましたよね。
同じ時間を共有するわけだからそんなしゃべんなくても伝わるものは伝わったりするんだけど。でも二郎は破竹の勢いだったね、演奏以外で。その演奏以外の部分をほぼ全部みて、で、あの演奏と思うと全てがしっくりきた。というミュージシャンはほかにいるだろうかと思っちゃったりして。
ー普段の二郎と、音楽が直結していると。
直結してた。すごいなと改めて思いましたね。
ー京都のスキマアワーにも参加しましたよね。
あのイベントも向井秀徳来るしくらいに思ってたけど、向井秀徳が全然気にならなかったのがよかった。まわりの人とか、イベント自体のほうがすごかったから。すいません!生ビールをひとつ。あ、違うや。ウーロンハイをひとつ。
(終)
ばんせインタビューは以上です。最後にホライズン山下宅配便のベーシストでありチェンバーアナホールトリニティのギタリスト、河合一尊さんのお話しを少し、チェンバーのライブ映像、そして高城晶平さんによる『CAT』ライナーノーツをお楽しみいただいて、終わりにします。ありがとうございました!
ー伴瀬インタビュー、ライダーキックからの歴史とか、高校時代の話なんかもしましたよ、、。
【一尊】ああ、前園に似てたからモテたとか?
ー(笑)そういう話しなかったんだよねー!すればよかった。
さぞもてたんでしょう。
ーさぞね。まあいいや、CATのはなしをね、、、(笑)いっそんさんはアナホールではベース、チェンバーではギターですけど、やはりスタンスは変わりますか?
そうですね。アナホールは難しかった。伴瀬の曲はそもそも難しいから。伴瀬が作曲した時点で完成されてるし、歌があってギターのコードが決まってて管も決まってるから、ベースは必然的にやることが決まってくるというか。ギターはうわものだというのもあって自由度がありますよね。
ーなるほど。
チェンバーの三人のよさっていうのは、曲のイメージを共有できつつある、というところかと。”雰囲気”で聴くじゃないですか、人って、音符の配列じゃなくて。だから雰囲気が大事だと思うけど、三人だと雰囲気を作り出せつつあるかと。
イメージが共有されてるとほんとの意味で自由になると思うんです。作った人ひとりがその作ったもののイメージがあるのは当然だけど、それに関わる人が大人数になってもイメージを共有できてるってことは、すごいことになるもんじゃないかと。
三人の強みはそこかと思います。それは僕の主観で、ほかの人はわかんないけど(笑)。
ーいやいや。そういう感覚はほんとに体感してるからこそ言えることだね。
僕にとってはすごくいい体験をしてます、チェンバーをやって。ライブするごとに楽しくなってるし。
ーお客さんの反応もいいと思う。
チェンバーは「聴かそう」というのが根底にあるんですよね。だからもしライブでお客さん少なかったとしても、今そこにいる人に良い曲を当たり前に聴かそう、ということをやり始められたんだと思います。
ーいっそんさんの曲である『01444』も入ってますね。
単純に僕の曲をチェンバーでやってもらえたのは嬉しいです。アンコールでやってもらえたり、大事に扱われてるのも嬉しいし。僕の曲の中であの曲を伴瀬が歌いたいっていったのは意外でしたけど(笑)。
ーあといっそんさんからおすすめの曲などありましたら。
『泳ぐことは困難だ』が個人的に気にいってます。
ー「泥笛」と「CAT」両方に入ってるのはこの曲だけなんですよね。
「泥笛」には大人数でのライブバージョンが収録されてますがチェンバーバージョンではまさに室内楽、という雰囲気です。ぜひ聞き比べてみてください。
チェンバーアナホールトリニティ「ボケの唄」
2010.12.31 at mona records
record by VIDEOTAPEMUSIC
チェンバーアナホールトリニティ『CAT』に寄せて 文:高城晶平(cero)
とんちれこーどの高い音楽性の要のひとりである伴瀬朝彦。
彼による新たなユニット、チェンバー アナホール トリニティの素晴らしいCDR作品「CAT」 が僕たちのもとに届けられたことにまずは祝杯をあげよう。
伴瀬朝彦の豊かな音楽性は、Joe Henry、Rufus Wainwright、Woody Guthrie、長渕剛、Geoff Muldaur、Tom Waits…と、偉大な音楽家たちに遜色なく符合するものだと僕は思う。前述の音楽家たちには、 音楽の泥臭さや古めかしさの奥に煌めく洒脱さや新しさを見いだす 嗅覚があった。伴瀬朝彦の独創的な楽曲世界もまた、 その嗅覚によって構築されてきたといえるだろう。
とりわけ、彼のリーダーバンド、アナホールクラブバンドの新作「 泥笛」は、新旧の楽曲を緊張感溢れるライブレコーディングによってさらにそ の独創性を極めた傑作であった。ジリジリとした空気感を持った「泥笛」には、 伴瀬氏のサムライ的気質というか、一種のデラシネ(根無し草) とでもいうべき魅力が溢れていた。
しかし今回の「CAT」には、 まるで温かい我が家を手にしたかのような伴瀬氏のリラックスした ムードを感じずにはいられない。アナホールクラブバンドにも在籍し、片想い、 ホライズン山下宅配便でも旧知の仲である遠藤里美、河合一尊。誰が中心になるわけでもない、 かといって誰も脇に追いやられることのない、 素晴らしく均整のとれたトリニティ・セッション。これがアルバム全体にリラックスした空気感をもたらしていること は、間違いなさそうだ。
* * *
今回のアルバムにおいて僕が一番驚いたのは、 6曲目に収録されている「01444」だ。クレジットにもあるように、この楽曲は作詞・ 作曲ともに河合一尊氏がペンをとっているのである。
(ちなみに、楽曲名「01444」は、 圧倒的楽曲数を誇る一尊氏の、1444曲目の楽曲にあたることから名付けられた。万ケタの「0」にこめられた野望にひれ伏すばかり…)
これはワンマンバンド的傾向が比較的強かったアナホールクラブバ ンドでは、僕の知る限りなかった動きだと思う。このことからもわかるように、チェンバー アナホール トリニティは単に伴瀬朝彦を中心とした小編成などではなく、れっきとした「ユニット」なのである。
余談だが、この「01444」は、 一尊氏が初めてソロライブをした際に、 サポートとして僕が参加して演奏した思い出深き楽曲。僕の考えたハモリが結構採用されていて、 個人的な感慨もひとしおだった…。
* * *
ともあれ、「CAT」 は全曲通してどんなシチュエーションにも寄り添う良質なポップミ ュージックである。
実際、僕の働くbar「roji」でも、 今作をかけた時の反応は上々だ。
今まで彼らの音楽に触れることのなかった方々には、 ぜひこの機会に手に取ってもらいたい。
素晴らしい三位一体の音楽が、 どんな場所でも最高の居心地にしてくれるから。
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